自由猫たちの館

東京下町、沖縄、台湾の猫たちを中心に。

私信、南の島へ。

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明日から土曜日まで、南の島にちょっくら行って参ります。

何故かって? だって暇なんだもん(笑)。 いやいや真面目な旅なのです。

 

南国と言っても、僕の旅は青い空、白い砂、碧い海とは無縁です。

2泊3日、ひたすらとある庶民市場に張り付き

猫と人と市場が織り成す光景を、淡々と撮り続けます。

 

その市場は、戦後の風情を今に残す、南の島でも稀有な歴史の生き証人。

深夜から早朝にかけ営業される、庶民に開放された公設青物市場です。

値札の無い対面商売が今も続き、どちらもしっかりお歳を召された

売り手とお客のおじいおばあたちが繰り広げる、丁々発止のやり取りは

この市場の貴重な風物になっています。

ウチナーグチで交わされるので、僕にはサッパリ内容が聞き取れませんが(笑)。

 

もっとも、開設60有余年を経て、さすがに木造家屋は疲れ果て

大型台風にでも見舞われたら、本当に危ないんじゃないかと

のんきな観光客の僕でも心配になる頼り無さだけに

いよいよ再開発着工のやむなきに至りました。

再開発自体は30年以上も前から計画され、反対する市場民と行政が

相対する事態が発生した時代もありましたが、事ここに至っては

両者ともにタイムリミットなのでしょう。

 

現在、川を挟んだ市場の北側は更地に帰され、ビル型の新市場建設の槌音が

来年夏の完成を目標に、日々かまびすしく響いています。

完成と同時に、現在残っている南側の方々も新市場に移り

この風景はすべて取り壊され、南の島の市場は

便利で、衛生的で、何より安全な新時代を迎える事になります。

 

この市場に、多くの猫たちが、人に寄り添い暮らしています。

まあ結構な数の猫たちが、人たちに混じって我が物顔で市場内を闊歩しておる。

この光景は、昭和30年代に幼き僕が目にしていた、東京下町の生活風景そのもの。

野良犬、野良猫、こうもりや時々蛇たちと、町と日常生活を共有していた

あの時代の光景が、2017年の今、ドラマのように僕の目の前で繰り広げられています。

 

お魚を咥えて逃げる野良猫を追いかける主婦の姿を、町中の人間が

微笑ましく見つめていた、そんな時代の記憶が今も残る南国の市場。

愛猫家と嫌猫家との葛藤も、もちろんそれなりにありますが

人間本位ではなく、生きとし生けるものに対するリスペクトが、今も健在。

心に余裕のある人々が集うと、こんな町が出来上がるのかも。

僕がここに通い始めたのは2008年からですが

まもなく初老域に入る僕のノスタルジーを、かきたててやまない場所なのです。

 

新しい市場に猫のベッドは用意されていません。

この光景はまもなく夢のまた夢の情景として

限られた人々の記憶にのみアーカイブされ、その人生とともに

歴史から姿を消す事でしょう。

猫たちの安寧な行く末を願ってやみません。

残された時間は、あと1年。

 

閑話休題

この問題、東京の下町が置かれているケースに本当に酷似しています。

今、下町に多く残る「木造住宅密集地域」の再開発が、猛スピードで進捗し

東京の路地からも、僕にとってかけがえの無いシーンが消えようとしています。

 

東京都が推進する「木造住宅密集地域整備事業」は

今年平成29年度~32年度の事業完遂を目標に、都内19区50箇所を対象に鋭意実施中で

まるでオリンピック開催に歩調を合わせたかのように

便利で、衛生的で、そして何より安全な東京の街づくりが進められています。

 

南の島のみならず、自分が住む東京でも、残り時間が少なくなって来たようです。

いやいや、僕自身の人生時計も、夜9時を優にまわってしまった。

猫が姿を消すのが先か、自分がくたばる方が先か。

時代の記憶と自分がここに生きた痕跡を、一枚でも多く残したい。

もう、強迫観念に駆られるかのように、南の島や東京下町に通う僕なのです。

 

おかげ様で、有意義な終活テーマが一つ見つかりました(笑)。

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